ドラフト最後の夜。
今年は、何事もなくドラフトが終わろうとしている。
海にも行かず、山にも行かず、アミューズメントパークとやらにも行かず…。
思い返せば思い返すほど、野球のみ…つまらない結果だけが残った。
なぁに…どうせどこへ行ったところでカップルだらけだし、人混みも苦手だ。
野球場でだらだらと過ごした方が正解に決まってる!
…のはずなのだが、憧れの選手と一緒なら、
そんな状況も変わってたんじゃないのか…そんな疑念が頭から離れない。
どんな球場でも、どんなに厳しい練習でも、スター選手と2人でやれば楽しく過ごせた…そんな気がする
思い切って渡米したり、現地突撃…とやらに挑戦するべきだっただろうか?
結果はともあれ、何事もないドラフトってのは避けられた気がする。
あ〜あ、今さらだよな。
結局、何にもできかったんだから仕方ない。
ドラフトは終わったんだ。
× × × ×
シーズンは7月のうちに結果を残した方がいいとか、
計画的に活躍しろとかよく言われるが、
俺は困ったことに追い込み型だ。
しかも、集中力が続かないタイプ。
今も、さっき父さんがくれたバットが気になって仕方がない。
誕生日でもないのに、父さんが俺にこんな高いものをくれるなんて、初めてのことだ。
けど、なんてことはない。
どうしても欲しい新モデルが出たので、今使っているのを俺に譲ることをダシに、
新モデルを買う許可を母さんから取り付けたのだ。
ったく、いいように使ってくれるよ。
…けど、ここは素直に父さんの物欲に感謝しとこう。
旧モデルになってしまったとはいえ、
手に入れたバットは、イチローモデルの高いヤツだ。
フツーの選手に買えるシロモノじゃない。
ずっしりとした手応え、キーンと心地良い音を立てて飛ぶ打球、
スムーズに振れるバランス…。
どれを取っても一級品だ。高級感にあふれている。
俺は、いわゆるメジャーリーグが好きだ。
暇なときはケータイかパソコンをいじって試合を見て、結果のチェックは欠かさない。
もっとも、俺の実力じゃ行けっこないのだが。
その中で、ドミニカ出身者だけはあまり興味がなかった。
ドミニカといえばカープアカデミーだし、取り立てて憧れの選手がいるわけじゃない。
なので、スルーしていた。
しかし、こうして手元に、黒光りする重厚なバットがあると、
誰かを思い出すような気がする。
けど…いったい誰を?
(とりあえず、ダメ元で、まずはマイナーリーグに挑戦してみるか)
代わり映えのしない野球人生に、変化が生まれた瞬間だった。
このゲームは、2ヶ月後に意中の選手に告白して、成功させることが目的です。